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毎度!よも助です

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藤沢周平獄医立花登手控え 好きな小説家と作品その9




文通
 
 
ぼくの初めてのデートの相手はマル田バツ子ではない
文通相手のMさんだ
高校1年の夏休みだった
送り付けた「しあわせ」という詩が「小学6年生」の4月号に載った
13人の女と1人の男が文通しましょうと言ってきた
その中の4人と文通を始めた
Mさんとだけ1度長い中断はあったがずっと続いた
そろそろ会いましょうかとなった
話が少しそれるが浦山桐郎の「私が棄てた女」の中での
主人公と棄てられる女のそもそものなれそめは確か文通だった
Mさんは千葉県市原市東国吉に住んでいた
どんな道順でどのように電車を乗り換え行ったのかは忘れた
待ち合わせた駅も覚えていない
ぼくはMさんに手渡そうと刷ったばかりの詩集を持っていた
何度か述べてきたように高校に入ると詩集を作り始めた
わら半紙にガリ版刷りしたものなのだが「やぶれた風船」と称した
2冊目のやつだった
結局ぼくはそいつをぎゅうっと丸めて背もたれと座席がくっ付き合う
あの隙間へ強引に捩じ込んだのだった
なぜ、そんなことをしたのだろう
読んでもらうのがイヤになったのだろうか
そんなことはない、詩ができれば手紙の最後に添えていた
あまりにもちんけなモノなのでみっともなく感じ出したのだろうか
でもそいつを商品として堂々と売っていた
捨てるならなぜホームとか車内のゴミ箱に放らずにあんなところに押し込めたのだろう
今考えてもさっぱりわからない
文通を始めた頃Mさんの修学旅行の写真が送られてきたが
集合写真だし何年も前のものだ
自然の摂理として想像を膨らませることになる
電車からホームに降り立ち辺りを見回すぼくにおずおずと
近づいてきた女はそのイメージとかけ離れていた
じきに文通は終わるだろうと瞬時に予感した
それは相手も同じだったろう
ナントカ城址公園を歩きどこかに座ったが
昼飯は食ったのかどうか
どこでどんなふうにバイバイしたのかキレイに覚えていない
ぼくは今も昔もファッションに興味を持てない男だが
あん時の服装は目をつぶってもくっきりと甦ってくる
我ながらダサい恰好だった
Mさんはぼく以上のたくろうファンでもあった
Mさんに会う前のぼくは
彼女と連れ立ってたくろうのコンサートを聴きに行くプロセスを
幾通りも夢想したものだ


走る酔っ払いよも助がうたう

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角田光代ツリーハウス 好きな小説家と作品その8




巻頭のことば
 
 
ともだちを脅迫して詩を書かせ「日向没弧」という
同人誌を出したことはすでに言った
それは4号続いたが何かが欲しいと巻頭に
惹句らしきものをひねりだした
僭越ながらそいつを披露したい
1、およそ白人の皮膚の色はおおよそ薄いピンク色をしている
2、この自動車がすべて自転車と化しみんながペダルを
  踏ンダラシャバダバdiscoverjapan
3、金金降れ降れかあさんが今でもくれるよお小遣い
  感謝感激雨霰!
4、あしたあさってやなあさってばいばいさらばいぐっどばい
  さよなら日高さらばじゃ日光

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三浦哲郎夜の哀しみ 好きな小説家と作品その7




年頭に当たって
 
 
ぼかあこれで63回目の新年を迎えたわけだが
まあとりあえず年が明けるということは1年があるからだろう
1年というモノが存在しなかったら
年が暮れることも明けることもない
1日が終わったり始まったりするのも
同じ原理システム理屈によるものでけして屁理屈ではない
ぼくの頭がまだとろけきってないのなら
1年は地球の公転で生じ1日は自転で生まれるはずだ
そして多分月は15日か30日をかけ地球を1周するのではなかったか
原始時代のぼくたちは自転も公転も形が丸いってことも知らなかった
でも1日は1年は歴然としてあった
1年が約365日とは知らなくても言葉がなくったって
1日という概念はあったろう
もし1日が3時間だったり53時間だったり1日1日がまったくの
でたらめだったとしてもぼくたちは生きてこれただろうか
ぼくの半分以上とろけてしまった脳みそでは
いくら考えてもわからない
流れ星にあしたはないのだろうか
何かの拍子で地球が流星になっちゃったらもうぼくたちは
生きていけないのだろうか
そうだとしたって過去と未来はあるのではないか
タイムマシンタイムトンネルタイムスリップ
3次元4次元
こいつらいったい何なんだ
バカなおいらにゃお手上げだ
アホなおいらは屁理屈を捏ね回すことで
どうにかこうにか生きてきた
であるからして屁理屈で締めくくる
時は1秒1秒1日1日必ず過ぎていく
ぼくはそう認識している
過ぎ去った過去を取り戻すなんてことは逆立ちしたってできっこない
人は生まれ落ちた瞬間に降って湧いた時間を次々と
切り落とすことで生きていく
与えられた寿命を1グラム1グラム切り捨てながら生を営む
人生が捨て去ることでしかないのなら 俺はそう思うが
俺たちに怖いモノなどないではないか


走る酔っ払いよも助がうたう

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宮本輝流転の海 好きな小説家と作品その6




兄貴
 
 
が死んで10年になる
9歳違いだが幼い頃はオヤジと同じように
何の躊躇もなく尊敬していた
中学の時は生徒会長で県で一番の高校へ学区外からいった兄貴は
自慢であり誇りだった
浪人中の兄貴が国鉄巨人のナイターへ連れて行ってくれたことがある
国鉄の先発は村田だった
神宮球場は狭く右翼は90mしかないが90と書かれたフェンスの
丁度0の真ん中に一塁手の左肩をかすめた王の打球が突き刺さった時には
ひっくり返った 運よくそれはファールだったが
試合は国鉄が3-2で勝った
帰りの電車でバナナを食べた
日光に着いたのは0時1時を過ぎてもう2時近かったがあの頃は
そんな時間までまだ電車が走っていた
大学生になった兄貴は帰省すると
焼きそばを買ってこい
と必ず言った
焼きそばの他にも雑多なものを売っていた「千代乃や」は
東武駅前「ほていや旅館」の横っちょにあった
鍋を片手に買いに行くのだが立ち上がるのも大儀そうなお千代さんの作る
ギトギトに脂ぎった焼きそばはぼくも大好きだった
成長するに従いオヤジのことはどんどん嫌いになったが
兄貴に対してそうしたことはなかった
今でもある種畏敬の念を抱いている
ただ9歳の年齢差は当たり前だがずっとそのままだった
余命1年と宣告されてからきっちり1年後に死んだ
死ぬ前だったか後だったか
義姉からブログの存在を知らされた
膵臓がんを公にすることから始まったブログらしい
だが読んでみたいとは思わなかった
義姉にブログの名前を聞いたこともない


走る酔っ払いよも助がうたう


 

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池澤夏樹花を運ぶ妹 好きな小説家と作品その5




日向ぼっこ 中学卒業を前に
 
 
感じるほどではない寒さの中でほのぼのとした太陽が全身を照らすと
気持ちのいい脱力感がある 
空は青く高く突き抜けて深い
校庭は校舎より一段低く段差は芝生のスロープで
寝っ転がるには絶好だ
校庭の向こうは若杉町であっちこっちの屋根のトタンがアトランダムに
キラリと光る
もっと向こうの国道119号は見えないが
しょうもなく聞こえてくるダンプのエンジンの唸りが
脱力感に拍車をかける
そのガソリンの切れ端だろう
風に紛れてさすらって鼻腔をくすぐるようにも思うのだ
さてさてさてさて
もうじき昼休みは終わりだが
できればこのままずっとどこまでも果てしなくこのようにこんなふうに
沈没していたいのだ

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