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月曜日は市場へ出かけ茄子と大根を買う予定

一週間
 
 
十八で上京し蒲田に部屋を借りてから四十年以上一人暮らしが続いている
一人でいてもさびしいとか物足りないとか感じる性質ではないので
一週間一歩も外に出ないとか一ヶ月誰とも口を聞かなかったなんてことはよくあった
それにともだちも少なくぼくを訪れる人間は滅多にいない
田園都市線は尾山台と等々力のどちらから歩いても六分の
アパートに住んでいた二十代前半奇妙な
一週間があった
月曜日 マサジが家出してきた
大学を出て家業を継いだというか任されたのだが
気持ちの整理はついても整頓がまだのようだった
ここに何度も書いてきたように酔って意識をとばすことくらいぼくにとって朝飯前だが
本当に気を失ったことは一度もない
それなのにマサジは口を聞く間柄になった中二の時すでに二度失っていて
それを誇りにもしていた
このあとマサジは仕事を探すふりをしながら
ぼくのところとクサカリのところを行ったり来たりする
火曜日 二子新地でやきとりやを営む姉が子供を負ぶい何の連絡もなしに訪ねてきた
ぼくが二子新地へ足を運ぶのはしょっちゅうだったが
姉がぼくのところへやって来たのは後にも先にもこのときだけだ
ごくごく普通の会話を二十分ほどして帰っていったが
あれはいったい何だったんだろう
あのときの子供は三人姉妹の一番下だったと記憶するが
ウンチをひとつ六畳一間にこぼしていった
水曜日 午前0時 ナベさんがやってきた
ナベさんは渋谷道玄坂ガードわきのちっちゃな赤鬼という居酒屋の常連中の常連で
ぼくはそこで何度も働いた
何度もというのは赤鬼に飽きるとよそへ働きに行きそこが厭になると復帰するのだ
そういったことを経営者は容認していた
やめる時にはもう戻るものかと心ひそかに誓うのだったが
ナベさんは葉山から通勤していたが繰り返しくりかえし最終電車に乗り遅れた
どうもなるべくなら家に帰りたくないようだった
夜をやり過ごす場所を何箇所か押さえていて
九時ごろ店を出て行ったナベさんがすまないねえと閉店間際に戻ってきて
客席にまどろむのだった
 うちの良二はそちらにおりますかしら
という電話が週に一回か二回店のピンク電話にかかった
そんなナベさんを一度でも部屋に泊めたのは失敗だった
味をしめナベさんは頻繁にやってきた
三夜連続で来たこともあった
人を介しそれとなくソレしてもらうとナベさんの足は止まった
だからその日は久方ぶりの登場だった
馬場脚本ゼミの新年会の流れで 平塚競輪に行ったときのことだ
ナベちゃんはどうしてる?  と声をかけられ
葉山と平塚のことでもあるしてっきりナベさんのことだと思い込み
詐欺に引っかかった
そのあと男がナベちゃんと言うべきところをワタナベちゃんとも言ったので
ああこれがあの有名などうしてる詐欺と気づいたのだが
時すでに遅しだった
典型的なマザコンのナベさんの本名はワタナベではなくナベサワだ
さほど酔っていなかったのだろう
その日は口数が少なかった
五時ごろ目を覚ますといなくなっていた
木曜日 マサジ以外はだれも来なかった
新聞の勧誘もなかった 勧誘をうまく断るコツは最後まで丁寧に応対するとこにあるのだが
それがわからず三年後にえらい目にあう
あまりにもしつこいので面倒くさくなりトイレに引きこもると
勧誘員は勝手に部屋に上がりこみ
ぼくがギブアップするまで帰らなかった
金曜日 午後十時部屋がノックされるので出てみると女が立っていて
わたしのこと覚えてる? と言った
とにかく東京に出たかったので高卒後おやじのコネでとある会社に就職した
計画通りそこは三ヶ月で辞めてしまうのだが
そん時の背広が洋服ダンスで息を潜めていた
唐突にこれを着なければという強い思いに捉われた
せっかくの背広で定食やではアレなので
中目黒のキャバレーへと出っ張った
背広が効いたのかパートナーを口説くのに成功し
女は朝の六時にぼくの部屋から出て行った
それが一年近く前のことで
仕事をやめたら十二キロ痩せたという女はまるで別人だった
やはり六時に部屋から出て行った
土曜日 マサジが敬愛するお姉さんの旦那が上京してきた
このお姉さんは受験勉強の疲れから石油ストーブにガソリンを入れてしまい
家を燃やしてしまうのだが
体育の授業中にその知らせを受けたマサジは顔を輝かせスキップでも踏むように
燃え上がる家へと帰っていった
炎の先の煙が校庭からも見えた
義理の兄貴の説得にマサジは待ってましたとばかりに応じ
顔を輝かせはしなかったが何だか意気揚々と引き揚げていった
日曜日 マサジの家出を肴にほていやの息子クサカリと飲んだ

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