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毎度!よも助です

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信州菅平高原桑田館


は冬はスキー客夏はラグビー合宿の学生
を相手に商いする旅館だが
十九歳の夏と冬、二十歳の夏、そして二十二歳の夏と
四度草鞋を脱いだ
いまでこそ労働は罪悪とうそぶいているが
当時は生きるために働くのは仕方のないことと割り切っていた
根が真面目で正直者でおまけに小心者のぼくは
<それはいまでも変わらないが>
さぼるということができず陰日なたなくそれこそ一心不乱に働いてしまう
そこをおかみさんが気に入ってくれたわけだ
十九歳の夏、ぼくは病気持ちでもあった
尖圭コンジローマという性病である
亀頭の付け根部分に一ミリ大の疣ができ倍々ゲームで増殖し
果ては数の子状になってしまう
旅館の昼休みは長い、ぼくは毎日のように散策に出かけた
高原だけあって散策に適した鬱蒼たる林や森はいくらでもある
時々大木の陰に隠れ小便するような振りをしてマスをかいた
ぼくより一週間あとに働きにきた二人連れの片割れMさんがおかずだった
終わると数の子から出血する
けれどもだけれどもかかずにはおれなかったのだ
お互いに東京に戻った秋口、Mさんから封書が届いた
中にはロードショー館の招待券が入っていた
早速返信をしたためた
「ぼくの映画好きを覚えていてくれたんですね。真弓さんに期限切れの
招待券を送らせてしまったその腹いせに、いやお詫びに是非一度昼食を
もしくは夕食を奢らせてください」
考え抜いた文章だったのにMはウンともスーともいってこなかった
その代わりといっては何だが昭和女子医大病院に出向いた
尖圭コンジローマが限界に達していたのだ
ここまで大きくしたのを見るのは初めてだと担当医師は興奮を隠さず
ぼくの承諾をとってから写真を撮らせた
本来は患部を電気ごてで焼き切るのだがそれじゃ追いつかないので
局所麻酔のあとメスで切り取ったのだ
その痛いことといったらーーーーー
二十歳の夏、某俳優養成所で同期だった
三年前建設現場で作業中居眠り運転のダンプカーに突っ込まれ
あっと言う間もなく死んでしまった大将がぼくの後釜として働きにきた
二人がダブった期間は一週間だったが、おかみさんから
大将の物言いが直裁すぎて怖がってる人もいる、それとなくそれしてくれないか
と頼まれた
ぼくはどうしたのだろう?どうもはっきりしない
お互いに東京に戻った秋口、大将から連絡が入った
バイトで一緒だったSさんを好きになってしまった、打ち明けたいので
ちょっと付き合えと
Sさんなら去年の夏も働いていた、そして恋人もいるはずであった
二人は別れたのだろうか
それに大将が持っている情報がSさんは経堂駅を利用している
その一点のみであった
ぼくらは改札の外で網を張った、奇跡は起こった
電車を降りて改札へ向かう人の群れにSさんを発見したのだ
ただ奇跡はそこまでだった
二十二歳の夏、旅館の昼休みは長い
ぼくは毎日のように散策に出かけた
二キロ程離れたスーパーというかよろずやで
一リットル入りの缶ビールを買うのだ
高原だけあって飲むのに適した草叢や木陰はいくらでもある
一本のビールが時には二本に稀に三本になった
初めて四本目に口をつけた日の夕方
どうも働くぼくの姿話しぶりがおかしいということになった
陰日なたなく働く好青年から若年アル中男へと一気に転落した
その日が桑田館での最後の労働となった


走る酔っ払いよも助がうたう

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