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ぼくの好きな先生


田中典子<ふみこ>先生
 
 
誰に言われたわけでもないのに
小学高学年の頃から詩を書き始め
大学ノートにいっぱいになったそれを
サトーハチローに送り
詩集にしてくれと頼み込んだ
忘れた頃にサトーハチローの主宰する木曜会から葉書が届いた
もっともっと勉強した方がいいと思うが、どうしても本にしたいのだったら自費出版という手がある、もしノートが必要なら切手代00¥を送れとあった
顔から火が出たのがはっきりわかった
中学二年になり田中典子先生に教わるようになってから概ね4だった国語の成績が5になった
田中先生はぼくをえこ贔屓した
正義感の強い先生は否定するだろうがテストの点が平均を下回った学期も評価は5のままだった
このサイトに書いたアル中楽天家ルー・ジャクソンという詩は、夏休みの課題で提出したルー・ジャクソンに捧げる歌という作文が土台になっている
返却されだいぶ経ってから、あの原稿をもう一度見せて欲しいと言われた、学校の机の奥に突っ込んだままになっていると思っていたそれはどこを捜しても出てこなかった
あなた自身が書いたものなんだからもっと大事にしなきゃだめじゃないの、と思いのほか強い口調で叱責された、先生はあの作文を気に入ってくれたのだ
女の国語の教師に一つのイメージがある、整った顔立ちのオールドミスが多く太宰治を憎からず思っている、というものだ
田中先生は正統派の美人だった、そして独身だった、授業中ブラジャーのヒモが肩口からはみ出ていても気がつかないような人だった、たとえば生徒の誰かにそれを指摘されても歯牙にもかけなかった
中学の教科書に載っている太宰の小説は走れメロスだったが、その授業の時は肩に力が入るのが傍目からもわかった
高校に入って詩集を作るようになった、一人だと量に限りがあるので友達を脅して書かせ日向没弧という同人誌にした
わらばんしにガリ版刷りし表紙と裏表紙に白い紙を使った、あの当時わらばんしが二枚で一円白い紙が一枚一円だった、日曜日に宇都宮へ出かけ映画を見たあと、詩集一冊百円です、と書いた紙を首からぶら下げ横断地下道や足利銀行馬場町支店の前で売った
高校で印刷するのはまずいと判断し、中学時代の担任の生井先生にお願いして宿直の時に押しかけ刷らせてもらった、一号につき二百部刷り、一冊を生井先生に進呈しもう一冊を生井先生から田中先生に渡してもらうようにしていた
その母校の東中学校からアンケート用紙が郵送されてきた、あなたの経験を元に受験生にアドバイスが欲しいというもので、担当責任者が田中先生だった、用紙の裏側に、毎号の詩集のおすそ分けありがとう、初めの頃はコトバのカラ回りが気になったけど、最近のいいですね、素直なあなたの心が見えます、と書いてあった
たったこれだけの文章だがもしこの言葉がなかったら、まちがいなくこのとても詩とは呼べないだらだら愚駄愚駄文は書いていなかった
東京に出て何年かのち、田中先生はベイルートの日本人学校で教えてると風の便りに聞いた 日本には戻ったはずだがその後の消息は知らない
ぼくが中学だった時、田中典子先生はいったい幾つだったのだろう、調べれば分かるだろうが時間を節約し40ということにしよう、年齢差はどちらかが死なない限り拡がりも縮まりもしないから、生きていれば先生は83ということになる


思春記
 
アキレスの話を大関先生から聞いたのは高校一年の時だ
大関先生は端整で四角い顔をした大学を出たばかりの国語の先生で大関という名字がよく似合った
これは本来なら世界史で扱う材料だし、現国の授業は担任の金井先生から受けていたのだが、何らかの事情でその日先生はぼくらの教室に現れた
そして、スタート位置をずらしてやりさえすればカメはウサギに際限なく追いつかれはするけれど追い抜かれることは永久にない
このアキレスの論証をくつがえす定理は未だ発見されていないのだ、と口にアワをとばした
その夏休み以降彼女は学校へ来なくなった、色んな噂が飛び交ったが、そのどれをもぼくは聞き流した


馬場当先生のこと
 
ばばばばばばばば、ばばせんせえがしんでしまった
ぼくも馬場脚本ゼミの一員で卒業してからも数年間は接触があったのだけれど
最後に顔を見たのはいつだったのか、それはどんな折だったのか
てんで思い出せない
<午後の遺言状>で民宿の主人に扮した先生はいじらしくけなげだった
先生は新藤兼人のことをほんとうにほんとうに好きだったのだ
ババババババババ、ババセンセエガイッテシマッタ

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