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毎度!よも助です

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かちゃんへ


茶の間の真ん中に掘り炬燵があり
母専用の箪笥の前が父の定位置だった
母は台所寄りつまり土間側に座った
ぼくはあっちこっち誰かの隣にもぐりこんだ
母の箪笥の一番上は戸棚になっていて
裁縫道具や風呂敷などの小物類それに財布もしまわれていた
兄はちょくちょく母の財布からちょろまかしたらしい
ぼくにそんな勇気はなかった
けれど一度だけ百円を抜き取ったことがある
何のための百円だったかは覚えていない
後悔したがそれが使う前だったか後だったか
また使ったかどうかもはっきりしない
母に、「かあちゃんの百円知らないか」と聞かれたような覚えもある
それで後悔したのだろうか
とにかくその時ぼくの手元には百円玉があり
これを一刻でも早く返さないとこの世は終わってしまう
そんな恐怖に捉われていた
朝を飛び起きて、封筒を引っ張り出し、かあちゃんへと書き
百円を入れた
ところが母の姿が何処にもない
「かあちゃんは?」と姉か誰かに聞くと
「畑へ行った」と姉か誰かが言った
ぼくは駆け出していた
400メートルくらい先で大きな籠を背負った母を見つけた
さらに走った
ぼくは声をかけただろうか?
母が振り向きこっちを見た
近寄り「これ」と封筒を手渡し目を合わせることもなく来た道を引き返した
そのまま一度も後ろを振り返りはしなかったが
母がこちらをぼくの背中をじっと見ているのがわかった
涙ぐんでいるのがはっきりとわかった
ぼくが大きくなってから母がこの時のことを話題にしたことがある
「一緒に行くかって声かけようとしたら、秀雄は背中向けて小走りに行っちゃったんだよ」
封筒にかあちゃんへと書いたつもりがかちゃんへとなっていて
よく下の姉のからかいの材料にされた


走る酔っ払いよも助がうたう




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